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『長期脳死—娘、有里と生きた1年9カ月』

中村暁美さんが手記を出版 岩波書店から

◉「脳死」の真実を知るための必読書 ◉

1年9カ月間の脳死状態を経て天国へ旅立った愛娘・有里ちゃん(享年4歳)を最後まで看護した、中村暁美さんが実体験をつづった手記、『長期脳死—娘、有里と生きた1年9カ月』が11月6日、岩波書店から出版された。

この夏の臓器移植法改定により、法的に「脳死は人の死」と規定され、本人が拒否の意思を明示していない限り、家族の同意だけで、脳死患者から臓器を摘出し、移植できるようになった。「脳死は人の死。脳死移植推進」という前提の報道や情報ばかりがあふれる中で、脳死患者とその家族の側から「ノー」を突きつけた、初めての本である。

中村さんは、当時の日記も交えながら、一連の体験を更に克明にたどっている。語りかけるような素直な文章は、その場の雰囲気や中村さんの気持ちを、わかりやすく伝えている。

そこで改めて感じさせられるのは、脳死状態になっても絶対的な愛を注ぎ続ける母親の姿であり、変わらぬ兄弟愛、家族の絆である。一家が心臓が動き体も温かい有里ちゃんに感じ,思っていた「死んでいない。生きている」という「事実」は、脳死判定基準に照らした医学的、数値的な生死の議論とは全く次元が異なる。他人が入り込み、「あなたのお子さんは死んでいますよ。臓器提供しなさい」と言える余地のない世界のはずだ。

本の最後に有里ちゃんの主治医の1人だった、阿部祥英医師(あべよしふさ、昭和大学医学部小児科学教室助教)も、「脳死は死とは言いきれない」とした上で、「医療従事者が改正法案を根拠に脳死を一律に人の死として対応するのは、法的には妥当でも、医療として妥当かは慎重に議論する必要がある」と述べている。

[B6版 ・133p 1700円+税]

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